『よい子』って一体どんな子ですか?

子育て

誰が見ても安心できる上手な絵

でも

あまりに小さすぎる

『よい子』って?

元気な子供たち

見ていてほほえましいです

でも、周囲にかまわず騒いだり、大声で汚い言葉遣いをしたり

そういう光景を見ると、どう感じますか?

『よい子』にならないと将来大変だぞっ

でも『よい子』ってどんな子ですか?

緊張する子育て

『のびのび教育のススメ』

元気な5歳の男の子ユウキの母である恵美子は一心不乱に本を読んでいた

頼れる親戚知人も周囲にはいない

でも、子育ての知識はネットや書籍、情報はありすぎるぐらい存在しています

その情報の海で恵美子はもがいていた

ユウキを『よい子』に育てなければと

個性と『よい子』の葛藤

ユウキは5歳の男の子です

元気な盛りです

なんにでも興味があってほっておいたらどこへでも跳んで行ってしまう

その個性を伸ばしてあげたいとも思う

同時に周りに迷惑をかけない『よい子』であって欲しいとも思う

画用紙からはみ出てしまった絵

ユウキが画用紙に一心不乱で絵を描いている

画用紙に入りきらない大きな絵だ

置かれた机にもクレヨンがはみ出して塗られている

口を半開きで、目を輝かしてその絵を描いていた

途中から収集が着かなくなってクレヨンが何層にも重なって暗い色な部分まで

でも恵美子はユウキらしいなと

ほほえましく見つめていた

小学校入学に向けて

恵美子は、すでに小学校に通う兄姉など、上の子がいるお母さまからいろいろなお話を聞いた

「勉強もそうだけど、椅子にだまって座っているのがまず大変ね。」

「こどもって悪い真似ばかりするのよね。」

「最初が肝心。それが普通って思う事が出来ればね。」

活発なユウキを思うと恵美子は不安になった

その日から食事時などで椅子でじっとすることを強要するようになった

ダメな時はすぐ注意

良いことをしたら笑顔で褒める

褒める大事さを本やネットから得たのは大いに役に立った

ユウキも最初はイライラしていたが、恵美子の熱心な指導に根負けした

とても『よい子』に成長した

恵美子の努力のたまものだろうか、本人の素養であろうか

ユウキはとても『よい子』になった

知っている人に会えば笑顔で礼儀正しい挨拶

横断歩道も青が点滅したらシッカリと止まって待つ

学校でもしっかりと集中して勉強が出来ているとの事

恵美子が望む以上にとても『よい子』にユウキは育った

恵美子の同じクラスの父兄の知人友人から、小学校でのユウキの良い評判が耳に入ってくる

母子共に本当にたくさんの苦労があった

でも、それが報われた喜びと安堵でため息が漏れた

教室で見たユウキの絵

恵美子は担任の先生と会う個人面談で教室に訪れた

初めて入る教室に少し緊張した

小学校1年生の小さな机とイスで先生と対面した

先生はニコニコで恵美子に語った

「ユウキくんは本当に素晴らしいです。

勉強も運動も率先してやります。

1年生はまだまだ幼いですが、ユウキくんはみんなのお世話も率先してやってくれます。

本当に助かってます。

やっぱり下のお子さんのお世話とか頑張ってるんでしょうか?」

恵美子は先生の言葉が本当にうれしかった

ユウキがそんなに『よい子』に成長したことを実感できる最高のコトバだった

「いえ、一人っ子です

でも、家でもお手伝いもよくしてくれますし

本当に優しい『よい子』です。」

先生は笑顔で大きく何度もうなずきます

「でもすごいですよね。

ほら、教室の後ろにユウキ君の絵がありますけど、本当に上手ですよね。」

恵美子は振り返って後ろを見た

上の方に先生の大きな題字で『みんなのかぞく』と書かれていた

先生の指示した絵に目線を送るとユウキの絵があった

赤い屋根の家、緑の地面、真っ赤な太陽、お父さんとお母さん、そして真ん中のユウキ

3人とも目が大きくて口元が上がったニコニコの笑顔だった

とても上手な絵だった

ただ、

大きな画用紙に不釣り合いなぐらい、真ん中に小さくこじんまりと描かれていた

恵美子の心臓が飛び上がった

 

誰が見ても安心できる上手な絵

でも

あまりに小さすぎる

 

あのグチャグチャのクレヨンの絵が鮮明に思い出された

あの一心不乱に画用紙に向かっていたユウキ

今の優しい『よい子』のユウキ

その二つの姿が同時に目の前に浮かぶ

急に目の前が暗くなった

恵美子は顔を両手で覆ってその場で泣き崩れた

 

恵美子は憔悴しながら家に帰った

ユウキが玄関の扉を開けて恵美子を迎え入れた

「おかえり

先生、何か言ってた?」

それに答えずに恵美子はユウキを強く抱きしめた

ユウキは意味が分からなくて体を固くした

でも、すぐに力を抜いて母を抱きしめ返した

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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