グランピングで見つけた、大きな世界と小さな自分~自然と体験がもたらした澪の心の成長~

旅行

自然は、私たちに手を差し伸べてくれる

それを受け取るかどうかは、私たち次第だ

ゲイリー・スナイダー

ランキング参加してます。クリックしていただけると励みになります

グランピング施設『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』を舞台の別記事はこちらです

『ゲストのためは自分のためだった!選択の果て、新たな世界の扉を開く』

『こころ』に灯された炎~挫折を乗り越え、家族愛を見つけた新たな光~

オシャレ小学生澪(みお)への自然からの贈り物

澪(みお)は小学校3年生で、ちょっぴりおしゃまな性格

彼女は大のディズニーランドファンで、

キャラクターたちと触れ合いながらおしゃれをすることが大好きです

 

しかし、母の瑠美はディズニーランドではなく、

ゴールデンウィークにグランピング旅行を計画しました

澪は、せっかくの休みになぜ田舎に行かなくてはならないのかと、少し不満そうに思っていました

 

しかし、そんな澪も母と一緒にアクティビティを楽しんだり、

自然体験をしたことで、大きく変わっていきます

澪と瑠美はグランピングを通じて、お互いに新しい発見をして、成長していきます

 

二人の心の変化と感動の物語を是非最後までお楽しみください

都会少女、グランピングへの不満と楽園への到着

澪は電車に揺られながらも不満がくすぶっていた

せっかくのゴールデンウイーク、澪は大好きなミッキーに会いたかった

しかし、母の瑠美は自然体験とアクティビティを楽しめるグランピングの宿泊を選んだ

電車内で澪は母が話しかけても興味を持つそぶりもなかった

 

電車は施設の最寄りの駅についた

ここで送迎のバスを待つことになる

周辺には同じように送迎を待っているであろう家族連れが何組もいる

 

――――年下ばかりじゃない!

 

澪は自分より年下の子供が多い事で、

アクティビティが小さな子供向けと感じて余計に気持ちが萎えていった

 

バスに乗り込むと10分程度で『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』に到着した

スタッフのお兄さんお姉さんが腕を大きく振って出迎えてくれる

バスの扉が開くと子供たちが我先にバスから飛び出していく

気持ちの萎えている澪は、その場にとどまって降りない

瑠美に促されてようやくバスからおりた

 

どうやらここは元は小学校の敷地のようだ

3階建ての校舎が建っている

元グラウンドであったろう大きな広場を囲むように、大きな白いテントの宿泊施設が立ち並んでいた

広場の中央にはトランポリンがあり、子供たちの喧騒が聞こえてきた

少しの勇気が澪の心の扉を小さく開く

澪はクラブハウスに入ってみた

そこには大人たちと抱っこされている乳児しかいない

そこに自分の居場所を感じなかった

 

澪はクラブハウスを出るとみんなが集まっているトランポリンに向かった

子供たちが飛んだり跳ねたり転がったり、とても楽しそうだ

澪もトランポリンをしたいと思った

でも、自分のお気に入りの服が汚れるのが嫌だった

瑠美もその場にあらわれる

 

そこにスタッフのお兄さんがやって来た

そのお兄さんにトランポリンの男の子が声をかけた

 

「ねえ!お兄さん!運動会やろうよ!」

 

お兄さんは時間を確認すると、インカムで何やら話している

そして、子供たちに大きな声で語りかけた

 

「よし来た!じゃあ、玉入れとリレーをするか!」

 

それを合図にトランポリンから子供たちが急いで降りてくる

別なお兄さんが赤と白のお手玉がたくさん入ったネット付きの棒を2本持ってきた

子供たちは勝手がわかっているのか、背の順で並び始めた

人数が奇数で一人足りない

するとお兄さんが澪に向かって大きな笑顔で親指を立てた

澪をビックリして体がのけぞる

 

「澪ちゃん、行っておいで!」瑠美が背中を押す

「でも・・・・・お洋服が・・・・・」

「気にしない、気にしない。」

 

子供たち全員が澪を見つめている

恥ずかしい気持ちとみんなに迷惑をかけたくない気持ちでとぼとぼ歩いて向かっていく

待ってられないのか、子供たちが走って澪を迎えに来た

澪の両手を引いてチームの輪の中に入れる

 

澪の紅組は玉入れは残念ながら負けてしまった

リレーで逆転をと紅組の子供たちは気合が入っていた

最終走者はスタッフのお兄さん二人だった、

瑠美はバランスを取って勝敗を分けると勝手に想像していた

しかし、その想像は破られる

最終走者のスタッフのお兄さん2人は本気で走り抜けた

結果は紅組の勝利

勝利の輪の中で澪は跳ねあがって喜んだ

しかし、瑠美と目が合うとまた不満そうな顔に戻った

焦げたクレープが教えてくれた母娘の絆

P&Fパラダイスでは同じ時間でもアクティビティを3種類選べる

その中から参加したいアクティビティをゲストが選ぶ方式だ

澪と瑠美は最初のアクティビティはクレープ作りを選んだ

クレープに食紅で鮮やかに色にして、折りたたんで鯉のぼりの形にするものだった

 

テーブルに、そのままの材料の粉、牛乳、卵などがセッティングしてある

なんとそこにはバナナとイチゴをカットするために鋭いナイフすら用意されていた

子供のお遊びとは一線を画していた

澪はスタッフのお姉さんの指示に従いつつ、

周りを観察して初めてのクレープ作りに挑戦していた

 

ところどころで瑠美も手伝う

しかし、瑠美は料理はあまり得意ではない

お菓子つくりなど澪と同じく初めての体験だ

 

澪の方が率先して手順を踏んでいく

クレープ生地は出来上がった

次に生クリームを電動泡だて器で泡立てた

もちろん2人が初めて使う道具だ

やり方を間違えたのか、生クリームのしずくが盛大に飛び散る

澪のお気に入りの服は生クリームのシミがいくつもできてしまった

それでもかまわずに作業を続けた

液体だった生クリームが突然ホイップに変わってきた

二人はその変化に感動すら覚えた

 

卓上コンロでフライパンを温めて中心に生地を流し込む

しかし、丸く広がらない

いびつな形で固まってくる

フライパンの温度が高すぎたのか、気泡が生じてきた

コンロの火を弱火に急いで変えた

しかし、急に温度が下がるわけではない

すっかり焦げて丸くない不格好な生地が焼き上がった

二人で意気消沈してしまう

代えはない

焦げた生地の中に泡立てた生クリームとカットしたバナナとイチゴを入れる

四角に閉じて鯉のぼりの形にしてみた

 

緑の生地が焦げた焼き魚のようだった

瑠美がクスクス笑いながら、

 

「まるで緑のたい焼きみたいね。」

 

見た目はとてもおいしそうには見えない

しかし、テーブルを見回っているスタッフのお姉さんが完成品を褒めてくれた

澪はあきらめたように小さく食べてみた

生クリームまで届かない

クレープ生地だけが口に入った

 

「――――おいしい!」

 

見た目と予想に反してもちもちしたその焦げた生地はとてもおいしかった

それよりなにより、母と一緒に悪戦苦闘して作ったことが一番大きかったかもしれない

瑠美も一口食べる

口元に手を当てて目をまん丸に大きく開いた

二人は驚きと感動のまなざしをお互いに向け合った

苗と澪の成長の季節

メインのアクティビティは田植え体験を選んだ

澪は突然の運動会やクレープ作りでP&Fパラダイスが普通の施設とは違う手ごたえを感じていた

こうなるとがぜん興味を持ってきた

 

車で5分ほど揺られた先に田植え体験の田んぼがあった

参加者は靴下と靴を脱いで裸足になった

田んぼまでの10mほどアスファルトを裸足で歩く

澪はアスファルトの道路からまたいで田んぼのあぜ道に乗った

 

――――柔らかい

 

あぜ道はクッションが効いてふかふかだった

田んぼを見るとタニシやアメンボが見える

スタッフのお兄さんが突然田んぼの中に入った

「奥から始めるけど、田んぼの中を歩きたい人はもう入っていいよ!」

男の子たちは我先に田んぼに入っていく

泥が飛び散って子供たちの服が汚れていくのが澪の目に飛び込んだ

自分の服をじっと見る

一瞬躊躇したが、澪は意を決して田んぼに足を踏み入れた

澪は水が冷たいと思っておそるおそる

 

「あったかい!」

 

つい声に出てしまった

するとスタッフのお兄さんが、

「だから田植えが出来るんだよ。

冷たかったら稲が凍えちゃうよ。」

 

お兄さんは全員に稲の苗の束を手渡した

苗3本を一組で等間隔に植えていくようだ

小さな子供たちは列もばらばらに適当に植えていた

澪は自分の担当の列を真剣に、遠くから続く自分の列を確認してまっすぐ等間隔に植えていった

慣れた手つきの澪の列だけが他の参加者を置き去りに伸びていく

瑠美が澪に声をかける

「澪、他の子の場所にも植えてあげて!」

振り返ってうなずいた澪のほほには泥が大きくついていた

瑠美はその顔を見てつい笑ってしまった

 

服はもう泥だらけだ

瑠美の目の前で澪はほほの汗をぬぐった

ぬぐう手には泥がついている。

瑠美はどうして澪のほほに泥がついているか、その理由が分かった

瑠美は澪の泥だらけの顔を誇らしげに見ていた

 

田植えは終わった

澪は我に返って改めて自分の姿を見渡した

あのかわいかったお気に入りの服はすっかり汚れてしまっていた

悲しい気持ちがちょっぴりした

でも、自分が植えた苗を振り返って見たら、そんな気持ちは吹き飛んでしまった

 

「さ、澪ちゃん、流そう!」

スタッフのお兄さんがそう言ってホースからシャワーをかけてくれた

「冷たい!」

「そうかい。これは井戸水をくみ上げた水だよ。

冬に触ると暖かく感じるんだけどね。」

「え、井戸水!」

地面から出て来た水

澪はもっと濁ってるかと思った

それはキラキラと輝くとてもきれいな水だった

「飲んじゃだめだけど、口に含んでごらん。」

口に含むと甘い味を感じた。

「水道のお水は消毒してるんだよ。

でも井戸水はそのままの水。全然違うでしょ!」

 

あぜ道の感触

田んぼの水の優しい暖かさ

自分が植えた稲への想い

井戸水の口当たり

 

すべてが澪にとって初めての経験だった

そして、そんな娘を目の当たりにした瑠美もまた心に熱い物を感じていた

都会の常識を超えた交流の喜び

夕食はバーベキューだった

澪も瑠美も悪戦苦闘したが、おいしく食べる事が出来た

 

食後に広場を見ると小さなキャンプファイアーに多くの子供たちが集まっていた

子供たちはスタッフのお兄さんをせかしている

 

「もう少し待って!じゃあ誰かマシュマロをもらってきて!」

 

その声にこたえるように子供たちがクラブハウスに走っていく

澪も興味を持って子供たちを追いかけた

クラブハウスに入るとカウンター越しにスタッフのお姉さんが作業している

 

子供たちが一斉に、

 

「マシュマロ、く~だ~さい!」

 

するとお姉さんが大量のマシュマロが入った木の器、

小袋でまとめられた一口チョコレート、

鍋に入ったクラッカーを出した

 

集まった子供たちはみんな小さかった

スタッフのお姉さんは澪を手招きした

 

「鍋は少し重たいからお願いしていいかしら?」

澪は瑠美から家で仕事を頼まれると面倒な気がしていた

しかし、この時はなぜか率先して体が動いた

 

マシュマロは大きめの子たち

袋に入ったチョコの器は最年少が運ぶ

落としても袋入りだから平気という配慮だろう

 

仕事がしたくても出来ない小さな男の子が二人寂しそうにしていた

澪はドキドキしながらこう言った

「・・・・・・いっしょにはこぶ?」

男の子たちは大喜びで鍋に手をかけた

正直運びにくい

でも、男の子たちはとても誇らしげに運んでいく

その様子をスタッフのお姉さんはとても嬉しそうな笑顔で見送った

 

澪はマシュマロ焼きをするのは生まれて初めてだった

見よう見まねであぶってみる

こんがりと表面が狐色になった

かじってみる

表面が溶けて中が固いマシュマロだった

 

すると近くの男の子が、

「澪ちゃんちがうよ!溶けた表面だけを口で取るの!」

男の子が手本で、唇を尖らせて溶けたマシュマロだけを削り取って食べた

澪をそれをまねてみる

表面の焦げをみるとヤケドするのではと怖かった

その想いと裏腹で全然熱くはなかった

溶けたマシュマロはクリーミーでとてもおいしかった

表面の焦げた部分も味も特徴的だった

 

澪は焦げたマシュマロを食べたいと思った

 

「あ!」

 

火に近づけすぎた

マシュマロに火がついてしまった

真っ黒になってしまった

澪はこれは食べれないと思った

 

すると知らない誰かのお父さんが声をかけてくれた

「あらあら、やっちゃったね!ちょっと待って!」

そう言って焦げた黒い部分をおじさんが素手の指でむしり取った

「もう大丈夫。食べてごらん。」

しらないおじさんが指でむしったマシュマロ

なのに澪はそれが気にならなかった

唇ですくって食べてみると、黒い焦げの苦さが少し残っていて、それもまた違ったおいしい味がした

「な!捨てるのはもったいないだろ!」

知らないおじさんは大きな声と大きな笑顔でそう言った

 

瑠美はあえてその輪にには入らずにクラブハウスの外のベンチからその様子を見ていた

――――連れてきて本当に良かった

瑠美のほほは自然に緩み、とても幸せた気持ちに浸っていた

経験の大切さを知った澪の成長

日が暮れると急速に気温が下がっていった

夜のとばりが降りて、静かな中で虫たちの声が大きく聞こえていた

 

最後のアクティビティは『スターウォッチング』だった

地面に毛布を何枚も広げて、

ゲストが思い思いのところで寝転がって空を見上げた

今夜は月もなく、星が本当に美しく見えていた

 

たくさんの星に囲まれていると世界は何て大きいんだと澪を感じていた

そして、自分は何て小さいのだろうとも

 

風が吹き抜けると星の瞬きがキラキラと応えているように思えた

スタッフのお姉さんは空を見上げ、場所を確認して天体望遠鏡をそれに向けた

細かく微調整をしている

ゲストのみんなは思い思いに空を見上げておしゃべりをしている

 

「お待たせしました!

では、皆さん、望遠鏡をのぞいて下さい!」

 

たまたま澪は最前列にいたので、一番最初の順番になった。

 

「望遠鏡には触らないでね。

レンズに目を近づけて見てみて・・・・・」

 

澪は髪の毛をかき上げながらおそるおそるレンズに目を近づける

最初は真っ暗な中に黄色い点があるように見えた

さらに目を近づける

唐突に像がはっきりと結ばれた

 

「す、すごい!」

 

澪は大きな声を上げてしまった

そこに見えたのは、

輪のかかった星『土星』だった

 

図鑑やプラネタリウムで見たことはある。

でも、実際の土星をその目で見たのは初めてだった

輪がここまでくっきりしているとは夢にも思わなかった

 

よく見るとまるで水中の様に土星の輪郭はゆらゆらと揺れていた

そして、のぞいている間にも土星はレンズの外へと逃げていく

「ねえお姉さん、どうしてお星さまゆらゆら揺れていたの?」

スタッフのお姉さんは澪に微笑みを向けると、

 

「うーーん、どうしてかな?

自分で調べてみても面白いよ。

でも、答えがどうしても知りたかったらお姉さんを見つけて聞いて!」

 

次の子のためにまた微調整が必要で会話はそこで途切れてしまった

 

澪は順番の列に3回並びなおして合計4回土星を観察した

 

今日の最後のアクティビティはこうして終わった

 

テントに歩いて帰る途中で瑠美は澪に聞いた

「どお、ディズニーとこっちだったらどっちに行きたかった?」

 

「当然ディズニーよ!」

澪は即答した

 

でも、歩きながら顎に指をあてて考えている

 

「――――でも、

――――ここも同じくらい楽しいかな?

ママが来たいって言うならまた来てもいいよ!」

 

瑠美はその答えにとても満足した笑顔を浮かべた

 

虫たちとカエルの大合唱を聞きながら、

二人は手をつないでテントへと帰っていった

自然は、私たちに手を差し伸べてくれる

それを受け取るかどうかは、私たち次第だ

ゲイリー・スナイダー

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

ランキング参加してます。クリックしていただけると励みになります

「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

コメント

タイトルとURLをコピーしました