降り続く細い雨とともに美しいバラは咲く―バレエと師弟の物語

バレエ

師とは知恵を授け、

弟子とは尋ねることで知恵を得るもの

共に向かうべき高みがある

レオナルド・ダ・ヴィンチ

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美しいバラを咲かせるために必要な細い雨

人生には挫折や苦難がつきものです

それもライバルたちでなく、自分自身の心に負けて

あきらめずに自分の才能や夢に向かって努力し続けることが、

どれだけの苦難であるか

 

本当に美しいものを生み出す事はとても難しいです

この物語では、バラの美しさを作り出すために必要な細い雨と同様に、

才能を開花させるために必要な努力と情熱について描かれています

 

主人公まどかが挫折の瀬戸際で見た藤田先生のアダージョ

憧れ、共に踊り、自分自身を成長させ、夢を実現する勇気を見出します

藤田もまた、生徒を導く意味をリラの精から教えられます

読者の皆さんも、主人公とともに、挫折と向き合いながらも

継続することの大切さを実感できることでしょう

才能と基礎の間で揺れる葛藤

3歳からバレエを習っている吉岡まどか(よしおかまどか)は、今年で10歳

発表会が大好きで、今年も発表会に向けてレッスンに励んでいます

 

しかし、バレエの基礎力を上げるためのバーレッスンや柔軟、

そういった基本的な動きの繰り返しは好きではありませんでした

 

まどかを指導する藤田麗子(ふじたれいこ)先生は、

まどかの明るさと元気さは素晴らしい才能だと感じています

同時に、筋肉のしっかりしてくる10歳の成長期は、

基礎力と柔軟性を高めるとても大事ない時期です

 

藤田先生の熱意はまどかもひしひしと感じていました

まどかは、基礎と柔軟がとても大事なことはもちろん分かっています

ですが、その練習が続くと気持ちがしぼんでいきます

麗子も、まどかの集中力が切れているのを感じ取ります

それでも彼女に確固とした基礎の土台を作りたいと思って厳しく指導をします

 

天真爛漫で見る人を幸せにする踊りが出来るまどか

その才能に基礎を上乗せできればどれだけ素晴らしいか

しかし、厳しく基礎を指導すればするほど、

まどかの輝きは失われていきます

ついにはレッスン中につまずき、とうとう転んでしまいました

まどかは地面に伏せたまま泣き出してしまいました

リラの精 雨に濡れたバラの美しさ

麗子は急いでまどかの元に駆けつけます

「足にけがはない?体はどこか痛めてる?」

麗子はまどかを椅子に座らせ、やさしく尋ねました

 

寄り添う二人

音が消えたお教室

外は雨の音が降り注ぎ、フロアに響いていました

 

雨音は麗子の実家のバラ園を思い出させました

 

まどかに語りかけます

 

「私の実家には素敵なバラ園があるの

毎年、バラを咲かせるのだけれど、美しいときとそうじゃない時があるのよ

毎日晴天が続いて、お庭で元気いっぱい遊べた年のバラはあまりきれいじゃないの

花びらはスカスカだし、色もきれいじゃない

 

美しいバラが咲く時は、霧のような雨が毎日続いたとき

お庭では遊べないけど、その時は絶対にバラがキレイって私は知ってたの

細い雨を受け続けたバラは花びらがビロードの様でそれは美しいバラが咲くのよ

バレエのその毎日続く細い雨って何だと思う?」 

 

まどかは、答えよりも『過去を思い出す』藤田先生の優しい笑顔に、気持ちが吸い込まれていました

 

麗子の『こころ』に何かがよぎった

バラ

ローズアダージョ

眠れる森の美女

リラの精

 

麗子はオーディオを操作した

「眠れる森の美女」のオープニング曲が流れ出す

 

私はまどかに技術を押し付ける先生ではだめ

『眠れる森の美女』でオーロラ姫を幸せに導いたリラの精

ヒロインはオーロラ

でも、この物語を動かしたのは誰?

 

麗子は優雅な微笑みを浮かべ、愛しいものを見るような細めた優しい目をした

麗子の周囲が温かく優しい空気に包まれる

雨の音すら彼女を美しく輝かせるようだ

優雅にオープニングのリラの精の登場場面のアダージョを踊り始めました

 

難しい動きは途中の2回のアラベスクだけ

基礎が際立つからこそ、その完成度がとても重要だ

これから始まる美しい物語『眠れる森の美女』の始まりを予感させる

麗子のリラの精はどこまでも優雅に、それでいて優しく舞った

余韻を引いてプロローグの曲は終わった

 

まどかは目を大きく見開き、

「もう一回!」

と叫びました

 

それに応えて、麗子は美しいアダージョをもう一度紡いでいきます

まどかはいてもたってもいられず、

藤田先生のマネをして真剣に一緒に踊りました

まだまだ踊りは未熟です

ですが、まどかの踊りは音楽に溶け込んで一つになっている優雅さがそこにありました

雨の誘い、リラの精と舞台へ

プロローグの音楽が止まった

まどかは大きく息を吐き、全身でフロアの空気を感じ取っていた

 

「藤田先生!これ誰の踊り?!」

「眠れる森の美女のリラの精の踊りよ。」

まどかは目をキラキラと輝かせ、藤田先生の瞳をのぞき込んだ

「わたし、この踊りが大好き!将来絶対にこの踊りを踊りたい!」

 

麗子は少し複雑な気持ちになった

まどかの年齢なら光り輝く主役のオーロラを目指すものなのに、

まさか物語を動かすリラの精に心が惹かれるとは思わなかった

自分と同じように、『こころ』に響く美しさを愛してるのかしら

遠い過去の自分をまどかに重ねて、麗子はは幸せな気持ちになった

師とは知恵を授け、

弟子とは尋ねることで知恵を得るもの

共に向かうべき高みがある

レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

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「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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