そのおもいやり、やりすぎですか?

旅行

今日のディナーは最高に楽しかったよな

素直に言ってくれよ

YES!って

忖度(そんたく)が流行語に

海外へ行くとよくわかることがあります

日本人は相手を思いやる気持ちがとても深いことに

それはとっても素晴らしいし素敵なことです

海外の人は『おもてなし』の国、『日本』に来ると驚きと共に大感激です

でも、ところ変われば品変わる

人の気持ちも様々です

今日はそんなカルチャーギャップについてのお話を

ハワイ、ワイキキにて

日本人のケンはワイキキビーチ沿いのホテルで働いてもう5年がたった

ハワイの生活もずいぶん慣れた、いや日本より合ってるかもとも思っている

そんなある日のこと、散歩をしていたらスコールにぶつかった

まいったと思いながらバス停ですわって雨が上がるのを待っていた

すると

車のクラクションが聞こえた

音の方向を見ると一台の車がスローダウン

運転席から助手席の窓を開けながら友人のスティーブが声をかけてきた

「乗ってけよ!

送ってやるよ!」

ケンは大変ありがたいと思った

でも、スティーブが自分を送っていくと絶対に遠回りになる

そしてこう答えた

「ありがとう。でも悪いよ、遠回りになるだろ・・・・」

スティーブは怪訝そうな顔をしてこう言った

「そっか!じゃあ良い一日を!」

車はそのまま走って行ってしまった

ケンはバス停に残されて呆然と立ち尽くしていた

さて、この流れ、皆さんはどう感じますか?

ハワイの人の視点から見た日本人

ワイキキに住むケンのもとに日本からの友人のサトルが訪ねて来た

今夜はケンのハワイの友人も交えて5人で食事&飲みとなった

ハーバー沿いの気の置けないメンバーが集まるのにちょうどよいシーフードレストランだった

スティーブも一緒だ

サトルはビールをビンのままで口をつけるスタイルがとても気に入った

サトルは慣れない英語でも社交好きもあり、存分に会話を楽しんだ

そんな様子にスティーブが

「サトルの方がよっぽどケンよりロコ(ハワイ地元民)っぽいな

ケンはちょっとシャイすぎるよ。」

と言って先ほどの車の話を持ち出した

ケンは少ししかめっ面をした

その時の事を思い出したのだろう

スティーブは身振りも交えてこの話題を続けた

「後で聞いたら乗せてもらう気満々だって聞いて笑っちゃったよ。」

ケンも反論する

「だって遠回りさせちゃうじゃん。それが悪いと思ったからその気持ちを伝えたかったんだよ。」

はあ?と言った顔をハワイ勢の3人がした

「遠回りなんて、そんなの、声かけた時点でこっちは分かってることだよ

乗るかって聞かれたら、乗りたかったらすぐにYESって言ってくれよ!」

ケンはサトルに助け舟を求めた

「日本人のサトルならオレの気持ち分かるよな!」

サトルはちょっと考えてうなづいた

ハワイ勢はまた

はあ?

という顔をした

ハワイ人から見た『ここが変だよ日本人』

今夜の話題は東洋人の中でも日本人がどれだけ珍しいかが中心になった

ハワイ勢のジェシカのエピソードも面白かった

「前に日本人の友達が絵を描いてたのよ

とても上手だから私はこう言ったの

『上手な絵ね。』って

そしたら彼女はこう答えたの

『そんなことないって、全然上手じゃないわ!』

私は本当に上手だと思ったからすぐに返したわ

『ううん!ううん!本当に上手よ!』

『やめて!やめて!ほんとに下手で恥ずかしいんだから!』

『私は本気で言ってるのよ!あなたの絵はとてもとても上手だって!』

こんな会話のキャッチボールを何度も何度も繰り返したわ

でもすごく彼女が嬉しそうに否定してたのがとっても不思議だったわ。」

この話に全員が笑った

ひとしきり笑ってスティーブがケンに聞いた

「これってどういう事?

褒められて素直にYES!Thank You!じゃ日本はダメなのか?」

ケンはフォークで食べ物をつつきながらしばし考える

そして答えた

「そうだよ

日本人はその会話のコミュニケーションを楽しんでいるんだよ

褒められてYESじゃ会話も終わりだろ!

ハワイ勢はケンの言葉の意味を理解するのにしばしの時間を必要とした

そして

テーブルをたたいて大笑い

「ケン!最高のジョークだよ!お前、まじでセンスあるな!」

もちろんジョークじゃない事は皆さんお分かりでよね

カルチャーギャップを楽しむ

全員大盛り上がりのディナーも終わりに向かっていた

今晩は最高に楽しめる会になった

でも、もうお開きの時間だ

ケンは思い出したようにテーブルの伝票を手にして、みんなに見せた

「日本での会計の時にもルールがあるんだよ。」

みんな興味津々

「日本はチップの習慣がないからテーブルチェックよりも入り口で払うのが普通な

で、支払う人間が会計票を持ってレジスターに行く。」

みんな身を乗り出してケンの話を聞く

サトルは意味が分かってカバンに手を入れてあるものを握った

ケンは隣のスティーブを店員に見立てて会計票を持つ

そしてサトルの顔を見る

サトルは胸の前で両手で財布を見えるように持ってはにかんだ笑顔でケンを見上げる

ケンはそれを見てうなずくと会計票をスティーブの前に置いた

それに合わせて笑顔のサトルが日本語でこう言った

「ごちそうさまでした。ありがとうございます。」

ハワイ勢はその小芝居に目が点

そして

周りの客もドン引きするレベルの大爆笑が巻き起こる

スティーブは呼吸が出来ないほど笑って涙まで流している

今夜は最後の最後まで楽しめる最高のディナーとなった

スティーブが最後に笑いながらこう言った

 

「今日のディナーは最高に楽しかったよな

素直に言ってくれよ

YES!って」

 

ここで補足すると、もちろん彼らは日本人を馬鹿にしているのではありません

むしろ尊敬しています

これだけ相手を思いやれる『こころ』のキメの細かさは日本が間違いなく世界ナンバーワンだと知っています

ただ、彼らの文化からするとまるで舞台の上の出来事のように感じるだけの事です

私はこの素晴らしい文化を含めて日本をとても愛しています

もちろんストレートな個人主義も大好きです

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

 人生のこの瞬間に感謝を

 

「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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