コーチが選手の能力を開花させる方法

スポーツ
Side view beaming man shaking hand of smiling kid during conversation after workout on field

HEY!

HIT THE BALL

HEY!

SMILE!

ENJOY!

スポーツを習う

皆さんは子供時代にスポーツを習ったことがあるでしょうか?

野球、サッカー、かけっこ、鉄棒

スポーツは習う前に勝手にやってみる

普通はそうですよね

では、コーチに習うってどういう事なのでしょう?

憧れの海外テニス留学

高校2年生の翔平は、スペインへテニス短期留学のために飛行機に乗り込んだ

「よし! 絶対にやってやるぞ!」

改めて気持ちを奮い立たせる

翔平は小学生の頃よりテニスの全国レベルで戦ってきた

高校生活も終わりに近づき、進路を真剣に考える時期に差し掛かってきた

スポーツ推薦で名門大学に行くのか

それとも

『プロテニスプレーヤー』になるのか

テニスに全てをかけた生活

テニスは技術を必要とするスポーツです

ですので、スタートを早く切ることが大きなアドバンテージになります

翔平もメキメキと頭角を現していきました

しかし、年齢が進むにつれて、体の強さ『フィジカル』に差が出てきます

テクニックだけでは勝てなくなります

翔平も中学、高校と大会を続けるうちに、体の強さが必要だと重々わかってきました

瞬発力を高めるために

持久力を高めるために

監督の檄が容赦なくぶつけられる

翔平はそれに耐えた

テニスで勝つために

自分のテニスの限界を感じる

Depressed mature man at home

翔平は全国でもマークされる強豪選手だった

特にフォアの器用さが群を抜いていた

フォアから繰り出される伸びるスライス

それと相反するフォアのドロップショット

強い力を両方とも必要としないテクニックショットです

翔平は同じ動き出しでその2種類を使い分けれた

ですが、ベスト8が良いところ

力でねじ伏せてくる相手のペースに巻き込まれると持ち味が出せない

自分が主導権を持ってプレー出来れば絶対に負けないのに

負けるたびにその悔しさで眠れない夜を過ごした

スペインテニス留学

翔平は全国強化選手に選ばれた

その特典で自費ではあるが、スペインのテニスアカデミーへの短期留学の権利を得た

確かにお金を払えばだれでも留学は出来ます

それでは教わるコーチのレベルは期待できない

強化選手として留学すればトップコーチが約束されている

コーチが面倒を見ている選手の中では女子選手で世界ランキング一桁もいる

彼女のプレーを映像で何度も観た

ヨーロッパ特有のクレーコートで高い成績を上げている

クレーコートは球速が遅くなる傾向がある

彼女は絶対にあきらめないで打ち続ける

決めたと思っても足が止まらない

その闘志とひたむきさに翔平はとてもあこがれた

スペインでは絶対にあきらめないテニスをする

どんなにつらい練習でも喰らいついていってやる

翔平は心に誓った

拍子抜け

スペインでの練習初日

入念なストレッチやランニングのアップをした

準備というより緊張をなくすためだ

翔平は緊張でカチコチでコートに向かった

コートに行くと数人の選手がいた

明らかに小学生たちだ

翔平は何かの間違いだと思う

コーチとアシスタントの2人がやってくる

練習は笑顔の元気いっぱいの挨拶から始まった

ラケットは置いてシャトルランが始まった

黙々と同じ内容かと思ったら小学生への配慮か

変化を加えて飽きさせない内容だ

途中で足が止まった選手が出てくるとストレッチをするように誘導

あの鬼の根性の世界ランク選手のコーチとは思えない内容だった

完全に当てが外れたと思って翔平は落胆した

すると、隣のコートにあの世界ランク選手の彼女が現れた

入念なストレッチをしながらアシスタントと話している

そして彼女がストロークのアップを始めた

ラケットのインパクトの音、ボールの風切り音、別世界のレベルを感じた

手出しトスのボールを打つ練習

子供たちと翔平のアップが終わった

日本のアップと違うのは、選手もコーチも『みんな笑顔』だった

やっとラケットを持った練習になった

誰にも言われないのに小学生たちが入念にバックハンドの素振りを始めた

翔平もつられてバックハンドを軽く振る

するとコーチが、「君はフォアハンドだ。準備して。」と笑顔で言った。

子供たちの練習が始まった

コーチはボールを手に取ると優しくアンダースローでトス

ワンバウンドしたボールを小学生がバックハンドの両手打ちで思いっきり振り抜く

でもしょせん小学生の力

ボールはそれほど飛ばなかった

何球も続ける

どこまでも優しく、ここだというレベルスイングがしやすい高さにボールが跳ねる

 

翔平は周りを見た

小学生たちは自分がそのボールを投げられたらというタイミングで素振りをする

真剣にそれでいて目を輝かせてラケットをこれでもかと思いっきり振る

翔平は何か居心地が悪くなった

自分も真似てフォアハンドを振ってみたが何か要領を得ない

 

すると、かの世界ランクの彼女がこっちのコートに合流してきた

「ハーイ!」

子供たちと気さくに挨拶とハイタッチ

翔平は自分に視線を感じた

しかしうつむいてしまった

小学生に囲まれて練習している自分が恥ずかしく感じた

トッププロと同じ練習をする

翔平の順番が来た

緊張して体が硬くなる

コーチがこっちにやってくる

サングラスを外して、いたずらっ子っぽい笑顔を見せる

「翔平・・・・

リラックスだーーーーー!」

両方の二の腕をつかまれて上下に小刻みに揺らされる

子供たちが嬉しそうに笑う

彼女も笑う

笑いながら手を振ってくれた

翔平は余計に恥ずかしくなった

コーチはサングラスを外したままボールを手にとって笑顔でそれでいて真剣にトスした

ボールは跳ねて本当に打ちやすいところでボールが最高点に達した

翔平はフラットで打ち切った

ところが

ボールは全然飛ばなかった

ボールは使い古されたベコベコのボール

まるで軟式のテニスボールのようであった

「GOOD!」

コーチは笑顔でそう言って次のボールをリズムよくトス

ベコベコボールと分かったので全身に力を込めて思いっ切り振る

「いいよ

だけど、力んだって飛ばないぞ

もっと考えて」

今度はネットを越える高さを考えた

「ネットは気にするな、引っかけてもいい

空までぶっ飛ばしてもいいぞ

翔平のマックスを見せてくれ。」

ボールをただ思いっきり打つ

これがここまで難しいのかと翔平は初めて思った

ふと集中がぬけて横を見る

すると

トッププロの彼女がトスのタイミングで素振りをしていた

どこまでも真剣に

コーチが翔平の集中切れに気づいたのか、フォアの練習が終わった

次の小学生がスタンバイしていたがプロの彼女が変わって前に出た

軽く数度跳ねてワイドなスタンスで準備した

コーチがボールをトスする

ラケットはコンパクトなテイクバックから振り抜かれる

踏み込みが違った

腰の回転が違った

左半身の引きが違った

右半身の残しが違った

背中の溜めが違った

目線の位置が違った

そして

彼女のショットは『音』がまるで違った

ボールがラケットで完全に押しつぶされて、ラケットのガットの上でボールがまるで円盤のようだった

コーチは続けて同じ球を投げる

子供たちは顔つきがまるで違ってきた

彼らは真剣に素振りをする

翔平も体の奥底に力がみなぎってくるのを感じる

翔平も真剣に素振りをしていた

テニスの本質

練習の日々はあっという間に過ぎる

思ったようなツライと思う練習は何もなかった

確かに砂浜のランなどはきつかった

でも、そこでもみんなが楽しめる仕掛けがたくさんあった

新しい技術などは何も習っていない

でも、自分の中で大きな変化を感じた

それは、テニスの見え方や考え方が大きく変わった事だ

翔平はこの留学で大きな財産を得た実感がある

コーチは相変わらずだ

何度も繰り返されるアドバイスで耳にタコが出来そうだ

 

「HEY!

HIT THE BALL!

HEY!

SMILE!

ENJOY!」

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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