『こころ』に灯された炎~挫折を乗り越え、家族愛を見つけた新たな光~

旅行

他人が自分に期待することは、

自分自身に期待すること以上に素晴らしいことです

その期待に応えることが、

自分自身を超えることができる原動力になるのです

そして期待に応えた時、

あなたは知らない自分に出会う事でしょう

ジョン・C・マクスウェル

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グランピング施設『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』を舞台の別記事はこちらです

『ゲストのためは自分のためだった!選択の果て、新たな世界の扉を開く』

『グランピングで見つけた、大きな世界と小さな自分~自然と体験がもたらした澪の心の成長~』

忘れかけていた絆を取り戻す旅

皆さんはこのゴールデンウイークはどうお過ごしだったでしょうか?

この物語の主人公の修平(しゅうへい)は家族旅行に出かけました

 

夫の修平は旅行は家族サービスの一環と考え、

6歳の息子の大翔(だいと)が楽しむことを手伝おうと思っていました

妻の美智子(みちこ)は家を不在にしている事が多い修平と息子の大翔(だいと)が、

旅行を通して強い絆を作って欲しいと思っていました

 

二人の旅行への『想い』は大きく違っています

 

修平家族はグランピング施設『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』を訪れました

ゆったりと休める旅行と考えていた修平は、

大翔を楽しませるためにアクティブに活動する羽目になります

 

修平は心と身体が疲労のピークで『火起こし』に挑戦します

もう少しというところで『火起こし』は失敗してしまいます

もうあきらめようとした時、大翔が大きな期待で父修平を後押しします

 

そこで修平の身に一体何が起こるのか?

 

彼は炎を灯すことが出来るのか

家族の絆はどうなるのか

修平は新たな光を見出せるのでしょうか

 

家族、愛、人生、挫折

多くの事を学べる感動のストーリーを是非お楽しみください

家族旅行、波乱の予感

Anafi 1.1.0

ゴールデンウイーク初日の朝8時

修平(しゅうへい)は妻の美智子(みちこ)と6歳の息子の大翔(だいと)を車に乗せて、

グランピング施設『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』を目指して高速道路を走っていた

いや進んで止まってを繰り返しているといった方が良いかもしれない

ゴールデンウイークらしく、アクアラインは渋滞で遅々として進んでいなかった

修平は渋滞に少しイライラしていた

 

本来はもう少し早く出発できるはずだった

前夜は仕事で遅く帰宅し、朝は5時起きだった

そのまま出発できれば渋滞も回避できた

しかし、大翔が家での朝食を抜いて車に乗れないと美智子が言い張り、

結果的に出発が遅れ、渋滞に巻き込まれることになる

 

普段は温厚な修平も、疲労、寝不足、そして渋滞のイライラの三重苦により、

アクセルワークが荒い運転になっていた

 

せっかくの家族3人の楽しい旅行のはずなのに、雲行きはあまり良くなかった

父親の思いと濡れたズボン

アクアラインを越えてからは道は混んでいるが順調に進むことが出来た

11時前にP&Fパラダイス近くまで到着した

昼食とチェックインには時間があるので、海岸近くの駐車場に車を停めた

 

修平はここで仮眠を取るつもりだった

座席のリクライニングを倒す

しかし、休むことは出来なかった

 

美智子が修平の肩を叩く

「お父さん、大翔が海を見たいって!」

――――ここまで運転したのは俺じゃん、美智子頼むよ

修平は心で毒づいていた

 

しぶしぶ大翔の手を取って海岸へと向かう

海岸に出ると風がとても強かった

沖にはたくさんのサーファーが波に揺られている

大翔は波打ち際まで行く

波打ち際にたくさんの小さな貝たちが散らばっている

大翔はおそるおそる触っている

テトラポットの近くに行くと大小のカニたちがのっそりと動いていた

大翔はいつまでもそれを見ていた

 

修平は大翔の後を追いかけるだけだった

そこに美智子がやってきた

 

「大ちゃん、靴脱いで海に入ったら?」

大翔は大きく頷くと靴と靴下を脱いだ

――――おいおい、ズボンまで絶対に濡れるぞ

案の定、大翔のズボンは波に洗われて水浸しになった

濡れたズボンでは靴は履けない

修平は大翔を抱えてフラフラしながら車まで戻る羽目になった

父と息子、トランポリンでつながる時間

お昼を軽く済ませて修平たちは『遊びと自由の楽園P&Fパラダイス』に到着した

車でクラブハウスに向かう間、幾人かのスタッフとすれ違った

全員が笑顔いっぱいで大きく手を振ってくれた

大翔は車から嬉しそうにスタッフのお兄さん、お姉さんを見ていた

 

チェックイン前にも関わらず、施設を自由に使えるようだ

修平はクラブハウスに入るとエアコンが快適に効いていた

クラブハウス内に革張りでクッションの効いたソファがあった

修平はソファに体を深く沈みこませた

今度こそ一息付けたと思った

しかし、美智子と大翔がクラブハウスに現れない

初めての場所で自分だけがソファでくつろぐことに抵抗を感じた

 

もう一度外に出ると美智子がフィールドのトランポリンで遊ぶ大翔を見守っていた

数人の子供たちがトランポリンの上で走ったり跳ねたりして遊んでいる

大翔はジャンプできずにうつぶせで揺れるトランポリンに翻弄されていた

大翔は修平を見つけた

「パァパァ!助けてぇー!」

もちろん本気で助けて欲しいわけではない

その証拠に大翔は笑顔でトランポリンの上を転がっていた

 

修平は呼ばれてもどうしてよいか分からない

そんな修平の様子を美智子がじっと見ている

修平は意を決して靴を脱いでトランポリンの上に乗った

 

トランポリンに乗るなど子供の時以来だ

大翔は転がる遊びと勘違いしているようにも見える

修平は大きく跳ねてみた

大人の体重でトランポリンは大きく揺れた

他の子供たちも大興奮だ

修平は調子に乗ってトランポリンを激しく揺らした

 

トランポリンを降りると修平に疲労がどっとのしかかって来た

まだチェックイン前だというのに

 

しかし、美智子は少し嬉しそうな笑顔を浮かべていた

――――そんなにかっこ悪かったのかな?

修平はそんなことを考えていた 

家族の絆を燃やす炎

チェックインしてからのスケジュールは目が回るようだった

そして、夕食前の最後のアクティビティが決まった

それは『P&Fパラダイス』名物、『火起こし』であった

芯棒の下の部分に丸い円盤状のコマのようなものが装着され、ひもをその芯棒に巻き付ける

ひもがほどける力を利用して芯棒を高速で錐揉み状に回転させる仕組みだ

芯棒の先は種火を作る木を装着させて木と木の摩擦熱で火を起こすのだ

 

最初は大翔と修平がペアで弓を上下させた 次第に白い煙が出てくる

いぶされた匂いも周囲に漂う

――――以外に簡単かもしれない

修平は思った

 

しかし、そこから種火になるまでがとても難しい

その前に芯棒の回転が止まったり、

二人の呼吸が合わなくて芯棒がずれたり、

失敗すれば失敗するほど体力も集中力も奪われていく

 

「大翔くん!いっしょにやろうか!」

スタッフのお兄さんが声をかけてくれた

大翔は修平の顔を見上げたままお兄さんの元に行った

お兄さんが動かす弓に大翔は手を添えていた

お兄さんの弓の上下動は修平のそれとはまるで違った

ものの2分もかからずに種火が出来た

それに大翔が息を吹きかけ続けた

白い煙が濃くなったかと思ったら炎が燃え上がった

大翔は出来上がった炎を興奮して手を振り回しながら見ていた

 

大翔が修平の元にやって来る

「パパもやってよ!」

疲労はピークで腕が重くて挙がらないほどだった

でも、燃え上がった瞬間を見て、修平は自分でも体験してみたいと思った

スタッフのお兄さんが新しい種火用の木材を選んでくれている

修平は一人で弓を上下に素早くバウンドさせるように動かした

先ほどのスタッフの動きが頭に入っているのでそれをまねる

煙が早いタイミングで出てくる

 

「ここから20回が大事です!頑張って下さい!」

スタッフの檄が飛ぶ

修平は気力を振り絞って上下動を繰り返す

芯棒を外しても煙は漂っている

修平は手のひらで風を送り込む

赤い点のような種火が見えた

スタッフのお兄さんが丁寧にその種火を荒い麻の繊維で包んで修平に手渡した

修平はゆっくりと丁寧に息を吹きかけた

息を吹きかけるたびに赤さは増していた

しかし、その赤い輝きは暗い闇に変わってしまった

 

――――あー、仕方がないか

 

種火が見れただけでも修平は満足していた

何より、もう昨日から今日の疲れで体がヘトヘトだった

大翔は火を起こせたし、とても素晴らしい体験が出来た

満足した修平はスタッフのお兄さんにお礼を言って終わりにしようとした

 

しかし、大翔が修平の腕をつかんだ

「パパ!すごかった!今度は絶対にうまくいくよ!」

 

もう『火起こし』のアクティビティの時間も終わりに近づいている

他のお客様も待たせている

それなのにスタッフのお兄さんはまた新しい種火用の木材を選んでいる

 

――――え、もう終わりだよね

 

修平は美智子の顔を見た

やめるように彼女の口から言って欲しかった

彼女は何も言わない

その間に新たな『火起こし』のセッティングはされていた

種火用の木材を大翔がしっかりと両手で抑えている

 

――――もう勘弁してくれよ

 

修平は集中力がないままに弓を上下に動かした

息子は火が起こることを信じている

修平ただ一人のために他のお客様たちが待っている

待たすことが恥ずかしい事と、申し訳ない気持ちで一杯になる

美智子が止めてくれることを待つも声がかからない

スタッフのお兄さんも大きな笑顔でこちらを見ている

 

――――誰か止めてくれ

――――じゃあ自分からやめるって言うか?!

その言葉を口にするのは簡単だ

だが修平は言葉を口にしたくなかった

 

――――なんなんだこの気持ちは!

 

芯棒の先から白い煙が出て来た

 

ここからが勝負だ!

修平は真剣に絶対に止めないと誓って上下を繰り返す。

とうとう種火用の木材にガッチリと芯棒が捕まって動かなくなった

目に見えるも弱々しくも真っ赤な種火がそこにあった

修平は全神経を集中して手のひらで風を送る

真っ赤の点がより大きくなる

スタッフのお兄さんが割って入って真剣な顔つきで種火を麻の繊維でもう一度包む

修平は1つの命を受け取ったようにを優しく両手で包み込む

大翔の目線の高さで優しく細く長く息を吹きかける

先ほどとは赤い火種の明るさがまるで違う

煙が濃くなる

息を吹きかける事に集中し過ぎて修平は煙を吸い込んでしまった

咳と涙が出た

修平は目を真っ赤にして、それでも息を吹きかけ続けた

さらに煙が濃くなる

 

そしてそれは突然だった

 

白い煙が一瞬で消えて、そこには大きな炎が燃え上がった

 

その瞬間、修平の心が飛び上がった

大翔は跳ねまわって喜んでいる

修平は炎を見つめ続けた

不意に目頭が熱くなった

見つめていた強い炎は段々とその勢いを減らしていく

 

大翔は修平の横に立って自分の手を翔平の手のひらに押し付けてきた

修平はその手を強く握り返した

炎は消えて最後は麻が赤々と輝いていた

 

二人は手を握ったまま美智子の元に行った

大翔は余った手で美智子の手を握った

美智子は今にも泣きだしそうな顔をしている

 

修平は茶化すように、

「どうした、煙が目にはいったか?」

「ばか・・・あなたの目だって真っ赤じゃない!」

そう言い合って二人は同時に笑いあった

大翔は交互に両親の顔を何度も見上げた

 

夕暮れが近づいている

あの種火のような美しい夕焼けがそこにあった

他人が自分に期待することは、

自分自身に期待すること以上に素晴らしいことです

その期待に応えることが、

自分自身を超えることができる原動力になるのです

そして期待に応えた時、

あなたは知らない自分に出会う事でしょう

ジョン・C・マクスウェル

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

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「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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