「未熟ながらも輝く青春の1ページ」~友情と初恋が交錯した日~

子育て

時には、心と体は別々の場所にいるような感覚になる

その気持ちは、自分自身を深く知ることで、

少しずつ表現できるようになる

ただし、多少の痛みを伴う覚悟が必要だ

カール・ロジャース

初めての感情に揺れる少年たち

青春時代には、大切な友達との出会いや初めての恋愛など、

人生を変えるような出来事が数多くあります

今回ご紹介する物語も、そんな青春の日々の

ほんの少し不器用ながらも純粋な心の交流を描いています

 

物語の主人公である健太と蓮は、小学5年生の男子

同じクラスの美羽へ特別な感情を持ちます

しかし、彼らの気持ちはまだまだ未熟で、

不器用に、もがきながらも成長していきます

 

美羽を賭けた二人の戦いの決着は!

 

青春時代には、失敗や恥ずかしい経験もたくさんあります

しかし、そんな悩みや苦しみも大切な思い出となります

ほんの少し未熟でも真剣で純粋な子供たちの姿に、

皆さまもきっと懐かしさを感じていただけることでしょう

緑ヶ丘小学校5年4組の3人

緑ヶ丘小学校5年4組の松本健太(まつもとけんた)と高橋蓮(たかはしれん)は大の仲良し

二人とも得意科目は体育

小学5年生の頃は勉強よりも運動が出来る方が注目されるため、

二人はクラスの中心でした

クラスのリーダーのようにふるまい、

いつも一緒になって騒いだり遊んだりして、

楽しい小学校生活を送っていました

 

同じように、このクラスの女子にも中心的な子がいました

花崎美羽(はなさきみう)は、かわいらしい外見もさることながら、

社交的でスポーツや外遊びでみんなを積極的に引っ張る活発さがありました

小学5年生になると男女別々で遊ぶことが多くなってきます

それでも健太や蓮は人気者の美羽が少し気になります

 

緑ヶ丘小学校は学期ごとに学年でクラス対抗のイベントを行う伝統があります

5月末にはクラス全員で綱引きや、クラス代表の男女各2人ずつ計4人の選抜リレーなどが行われます

健太も蓮も代表に選ばれて5年4組を勝利に導くと信じています

体育の授業でクラスの予選会が近づいており、彼らは練習に励んでいました

初夏の風のいたずら

ある日、緑ヶ丘小学校の5年4組での給食の時間の事です

担任の木村先生が手をケガしていて、ピアノを弾くことができません

いつもなら先生が伴奏して『ごはんの歌』を歌います

今日は伴奏なしで歌だけになりそうです

 

すると、美羽は手を挙げました

「先生、私が弾いてもいいですか?」

とても元気な声でした

木村先生は考えた末、美羽の提案を受け入れました

 

美羽は颯爽と椅子から立ち上がるとピアノの前に座りました

大きく開け放たれた窓から5月のさわやかな風が教室に流れ込みます

美羽の髪の毛が風になびきました

美羽は髪をかき上げると両手を鍵盤の上に置きます

そして鍵盤ではなく、みんなの方を向きます

ニッコリ笑って伴奏を始めました

歌に入るタイミングで大きく頷いてみんなを誘導します

そのまま顎で軽くリズムを取りながら伴奏をします

みんなはいつものように元気に歌えません

それに気づくと美羽はピアノを弾きながらみんなに向かって大きな声で一緒に歌い始めました

その声に引っ張られ、みんながいつものように大きな声で歌いました

 

演奏がおわりました

美羽はすぐに立ち上がって急いで自分の席に戻ろうとします

すると、クラスのみんなから歓声と拍手が飛び交いました

美羽はビックリして蓮の席の前で立ち止まってしまいました

その時、また初夏の風が教室を吹き抜けます

美羽の髪はまた宙を舞いました

その髪が蓮のほほを撫でます

美羽は拍手を受けながら自分の席に座りました

そして全員で大きな声で 「いただきます!」

給食のはじまりです

 

でも、蓮は動きません

髪が触れた頬に指で触れてかたまっていました

美羽と蓮に振り回される健太

その日以降、健太と蓮の関係は少しずつ変わっていきました

健太はいつものように蓮と遊ぼうとしても、蓮は元気がありません

その蓮の視線の先は、女子たちに囲まれた美羽だった

健太は蓮が美羽を意識していることに気がつきました

でもその感情の意味が分かりません

それどころか、自分を置いて大人になっていく蓮の姿に、寂しさと悔しさを感じます

 

そんな中、健太も自分自身の感情に戸惑い始めていた

自分が蓮を意識していることはわかっていたが、

なぜか美羽を意識する時間が増えている自分に気づいていた

その感情は何なのか、ただ単に蓮と競い合いたいだけなのか、

自分自身でも分からなくなっていた

 

そして、健太は蓮が美羽と話している姿を見て、自分の気持ちがわかりました

健太は美羽に惹かれていることを自覚します

理由は、美羽と蓮の仲の良い姿が腹立たしいと感じたからだ

何より、そんな感情に振り回されてヤキモキするのが本当に嫌だった

 

健太は、美羽が自分を好きになればこんな気持ちとも『さよなら』出来る

蓮が美羽を諦めれば以前のように楽しい生活にもどれる

そんな事を考えていた

未熟ながらも輝く青春

クラスで選抜リレーの選手を決める予選が体育の授業で行われた

クラスの男子20人を5人ずつに分けて予選4組を行う

そして予選で1位4人が決勝を行い、2位以内をリレーの選手にするというものだった

蓮と健太は順当に予選を勝ち抜いた

 

今は同じように女子の予選行われている

 

健太は蓮の元に行き、

「俺が勝ったら、美羽に告白する!」

 

蓮は驚くも健太の気持ちは薄々気づいていた

困った顔をしたが、健太の顔を真剣に見つめてこういった

 

「いや、告白するのは俺だ。絶対に勝つ!」

 

美羽の存在でギクシャクしていた二人

この宣言が二人を以前の友情へと引き戻した

 

女子の予選が終わって決勝の時間である

やはり美羽も決勝に名乗りを上げていた

 

すると先生が、

「すまん。時間が押してる。男子と女子の決勝を一度にするぞ。

8人並んでだからちょっと選手の間の幅をとってくれ。」

 

予選1位男女全員が一列に並ぶ

健太と蓮だけが並々ならぬ気合が入っている

美羽も決勝を走る

1位でゴールしたその場には美羽もやってくる

 

勝って告白だ!

二人は共にそう考えていた

 

「用意・・・・・・・」

 

「スタート!」

 

決勝の男子と女子8人が一斉にスタートした

健太と蓮は横一線だ

しかし、中盤を過ぎると健太がじりじりと前に出る

蓮は負けじと歯を食いしばって手を大きく振る

差がつまって来る

 

ゴール!

 

同着である

二人の心臓は早鐘のように鳴り響く

全力疾走が理由なのか?

美羽への告白を思っての事なのか?

二人は先生の顔を真剣に見上げる

 

「優勝は・・・・・・・・・」

 

「花崎美羽!」

 

二人はあっけにとられる

美羽は息を弾ませながらは二人の元に駆けつける

 

「お互いリレーの選手だね!本番は絶対に優勝しようね!」

 

二人はお互いに目を合わせる

お互いの目が泳いでいる

そして、そんな相手の様子を見て互いに大声で笑い合った

 

「あはは!そうだな、絶対に優勝するぜ!」

健太が言った

「当たり前だ!俺たちは強いんだから!」

蓮が返した

 

二人はガッチリと握手を交わした

 

そして2人は元の親友に戻り、選抜リレーに向けて意気込みを新たにした

美羽も一緒に力を合わせることを誓いあって3人で肩を組んだ

時には、心と体は別々の場所にいるような感覚になる

その気持ちは、自分自身を深く知ることで、

少しずつ表現できるようになる

ただし、多少の痛みを伴う覚悟が必要だ

カール・ロジャース

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

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「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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