つらいわよね
でも、今のその感情にいつか感謝する日がくる
嫌いな今の自分に真正面から向き合いなさい
いつも笑顔で楽しく過ごす
日々前向きで充実した人生
楽しくて笑顔が絶えない
そんな素敵な毎日を過ごしたいですよね
誰が好んでつらい思いをしたいでしょうか
私はもちろん嫌です
でも、その偶然のつらい体験がその人の必然に変わることがあるのです
戯曲『サロメ』より
戯曲『サロメ』オスカーワイルド
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典より
コンディショニングをしていたミュージカル女優さん主演の舞台を観劇に行く機会をいただきました
演目は『サロメ』
歌はなく、セリフ、演技、舞踊を含む演劇舞踊の作品でした
オスカーワイルドと言えば、皆さん金の像とツバメのお話『幸せの王子』はご存じでしょうか
愛憎の複雑さを演じ切る
嫌悪、怒り、欲望、狂気、失望、死を望む
主人公『サロメ』は、すべて人間の負の感情がこれでもかとつまった役です
サロメの感情のそのすべての理由が『愛』であるという矛盾を表現できるかが最も難しい点です
預言者ヨカナーンは自身の死の未来を知り、命を奪うサロメを遠ざけます
彼の演技も、もちろん、とてもよかったです。
しかし、その演技が薄っぺらに見えるほど
彼女の描く世界は深く、悲しく、そして、美しかったです
光を見上げる挫折が糧に
彼女は演劇学校時代に大きな挫折を経験していました
プロを目指す名門の演劇科
その門をくぐれるのは元の演劇校では神童、俊才、天賦の才と呼ばれた人たちです
そして、入学して知ります
その英俊の中では自分もただの人だと
彼女はその中でも素晴らしい才能の持ち主でした
しかし、上には上がいました
全身から醸し出すオーラは周囲の空気を暖かいものに
指先は物語りをつむぎ
笑顔はバラが咲き誇るがごとく
誇ってトップを主張して見下してくれればまだ救われたでしょう
しかし、誰にでも優しく、自分の知りうるすべてを提供し、みんなのレベルアップを心から喜びました
大空を舞う鳥にとってそれは普通の事、特別とは感じない
どう頑張っても勝てない
唯一フィジカルの強さだけは勝っていた
アグレッシブな動きやジャンプを必要以上に頑張った
その無理がたたり、ケガをしてしまった
やり場のない怒り
医務室で呆然としていた
担任の女性教員が駆けつけ、状況の聞き取りが始まった
ポツリポツリと説明をした
そして、なぜそこまで無理をしたのかを聞かれた
その問いで涙が溢れてきた
彼女への暗い気持ちが堰を切ったように言葉となった
言葉は途中で嗚咽に変わった
ただじっとその様子を見つめていた先生は、彼女の頭を優しく抱きしめた
先生は言葉を選んでこう聞いた
「彼女が嫌いなの？」
自分への優しい彼女の笑顔が目の前の様に頭に浮かぶ
「彼女は素晴らしい
誰よりも素晴らしい
そんな彼女を・・・・
彼女を妬む自分が嫌
そんな自分が悲しくて悔しい。
目の前から消えて欲しいって思う私が大嫌い！」
先生は黙って聞いていた
そしてこう語りかけた
「つらいわよね
でも、今のその感情にいつか感謝する日がくる
嫌いな今の自分に真正面から向き合いなさい。」
それを私に語る彼女の目は真っ赤でした
きっと心が鮮明にその時に戻っているのでしょう
それもまた才能なのかもしれません
私は鼻をすすり、涙をこらえて聞いていました
最後までお読みいただきありがとうございます
こころが変われば世界が変わる
人生のこの瞬間に感謝を
「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」
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