歌劇の旋律でつながる永遠のきずな~亡き旦那様との再会を求めて~

舞台

音楽は昔の言葉を呼び起こし

心に刻まれた思い出を再び語りかける

ジョン・レノン

ランキング参加してます。クリックしていただけると励みになります

再会の予感を求めて

感動の音楽物語

亡き旦那様との絆を胸に、おばあちゃんが再び音大を訪れました

年齢など関係ありません

勇気と情熱が紡ぐ夢と思い出

音楽の力と絆の奇跡を体感してください

彼女の心の中に秘められた感動の物語が今、始まります

青空を見上げて

5月も終盤に向かったこの時期、日差しはとても強くなってきました

でも、風が吹けば涼しく、とても気持ちの良い季節です

 

私は駅に向かう途中、一人のおばあちゃんが、小さな子供を連れたお母さんに道を聞いている場面に偶然出会いました

おばあちゃんはどうやら近くの音大に行きたいようでした

でも、そのお母さんの説明では上手く伝わらない様子です

私は道も知っていて時間もあったので、

おばあちゃんを連れていくことを提案しました

 

おばあちゃんは少し戸惑った表情を浮かべました

 

そして、ひとしきり空を見上げました

 

頷いて、私についてくることになりました

「足が不自由で遅いですけど、よろしいですか?」

と心配そうに尋ねるおばあちゃん

「大丈夫ですよ、ゆっくり行きましょう。」

私は笑顔で答えました

過去の輝き、歌声が描く素敵な思い出

Sunny view of the Southern Methodist University at Dallas, Texas

日差しの強い初夏の昼下がり、風が心地よく吹き抜けます

どうやらおばあちゃん、なんとなく音大への道の記憶をお持ちの様でした

私は、軽い好奇心で、なぜ音大に行くのかを聞きました

すると、おばあちゃんは嬉しそうに語りました

 

「昔、旦那と一緒にオペラ歌手のバックコーラスをしたことがあったの。

今度もそのオーディションがあるから、申し込みに来たのよ。」

 

私は記憶の中で、インターネットでの申し込みも可能だったことを思い出しました

お年を召しているおばあちゃんだからわからなくて直接やって来たのかと思いました

今回もご夫婦でご参加なのかと私は聞きました

「今回は一人なの。旦那はどんくさい人で、自分で何も決められない人だったから、前回は無理やり連れてきたのよ。」

彼女は少し寂しそうな表情で答えました

なるほど、おばあちゃんが一人なのは、そのためだと納得しました

 

「出来は良くなかったけど、参加した時の事はいつも良く二人で話したわ。

思い出すと恥ずかしいけど、それがいい思い出だったわね。」

 

おばあちゃんは微笑みながら話しました

彼女は話を続けました

 

「でも、どんくさいはずのあの人、先に逝ってしまったの。

今は一人で毎日退屈でつまらない日々を送っているのよ。」

libiamo ne’lieti calici!

強い感情の変化もなく、淡々はおばあちゃんは語りました

それゆえ、私は逆に強い衝撃を受けました

 

おばあちゃんは明るい表情のまま話を続けました

 

「でもね、また今度、オペラ歌手のバックコーラスのオーディションがあるって聞いてね。

昔来たことを思い出すのにも良い機会だと思ったのよ。」

 

おばあちゃんの表情には悲しみは見られませんでした

 

「それで、おばあちゃんはどんな曲を歌うご予定なんですか?」

私は丁寧に聞きました

おばあちゃんはそれに笑顔で答えました

 

「libiamo ne’lieti calici よ!」

おばあちゃんの口から信じられないくらい良いイタリア語の発音が響きます

 

「りびゃーも????」

私はたどたどしく、言い直そうとしましたがムリでした

 

おばあちゃんはカラカラと笑いながら、

「『椿姫』の乾杯の歌よ!」

 

その言葉に、あの有名なメロディーが私の頭の中に響き渡りました

 

「でも、おばあちゃんだから、オーディションに受かるとは思えないわ。

でも、ここにまた来る事が出来て、それがとてもうれしいわ。

 

「大丈夫ですよ!私に案内させてるのは、神様、いいえ、旦那様が行かせようとしているからですから。」

私の口からそんな力強い言葉が出て自分自身驚きました

 

おばあちゃんが初めて少し悲しそうな表情になりました

が、その後また元気な笑顔を取り戻しました

 

「そうね、どんくさいあの人の分まで歌わないとね。」

 

私たちは大学の入り口に到着しました

私は入り口でおばあちゃんに手を振りながら見送りました

 

おばあちゃんは、門をくぐったとたん、姿勢がしゃんと伸びたように感じました

そして、途中で足を止め、再び空を見上げました

 

じっくり、ゆっくりと

 

そして振り返り、私に丁寧にお辞儀をしました

 

私の耳におばあちゃんの

『libiamo ne’lieti calici!』

あの素晴らしい発音が響きます

きっと、彼女は夢を叶えるに違いないでしょう

私が駅に戻る道中、『椿姫:乾杯の歌』が心地よく、ずっと耳の中に響いていました

音楽は昔の言葉を呼び起こし

心に刻まれた思い出を再び語りかける

ジョン・レノン

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

ランキング参加してます。クリックしていただけると励みになります

「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

コメント

タイトルとURLをコピーしました